佐藤秀峰



海猿 (全12巻) ☆☆☆★★


wiki


ブラックジャックによろしく (全13巻) ☆☆☆☆★


wiki
「海猿」での海上保安官など、一般に広く知られていないテーマを扱った人間ドラマを描
き、その度に題材の注目度を高めている佐藤秀峰。長期連載二本目は医療の裏側を扱った。
といっても前述の通り先にメディアに取り上げられたのはこちらが先で、漫画家佐藤秀峰
の名が世間に広く知られることになったのは手塚治虫の作品に由来するタイトルの大胆さ
の担うところが大きいかもしれない。この辺は作者の作戦勝ちというところ。勿論内容の
インパクトも決して名前負けしていない。作品冒頭から救急病院の抱える問題点を見開き
で指摘し、以降も医療界の矛盾に主人公が煩悶するストーリーが続く。研修医である主人
公が研修プログラムによって各医学科を転々とするのだが、第一外科編、循環器内科編、
ベビーER編、がん医療編、精神科編の5編に分けられている。第一外科編では医局の持
つ矛盾、循環器内科編では病院体制、ベビーER編では法と社会通念、がん医療編では保
険制度と倫理、精神科編では報道と偏見、それぞれ現実にある深刻な社会問題を相手取り
悪戦苦闘する。さて、実はこの作品も一定の評価を得ながら賛否両論の渦に巻き込まれて
いる。これは読み手のタイプによる問題が大きいと私は思う。漫画や小説を読むとき、あ
なたの立場は常にどこにあるだろうか?主観的であるか、客観的であるか。作品によって
変わるかもしれないし、あるいは精神状態によって左右されるかもしれない。私は主観的
に物語に没頭するほうで、読み終わってから客観的にストーリーを反芻することが多い。
この作品は医療を扱っているがために、また多くの死を扱っている。死者がいれば、また
遺族がいる。こういった物語をリアリティをもって描き出せば、多くの人々の心を揺さぶ
る作品ができる。こういった作品は、客観的に読むことは薦められない。そうしてしまう
と、すぐそこにあったはずの感動がひどくつまらないもののように感じられてしまうし、
この作品も単なる社会派擬似ドキュメンタリー漫画に見えてしまうからだ。是非こういっ
た作品を読むときは自らを作品の傍に置いて読んでほしい。あなたならどう感じるか…。
何度読んでも泣ける作品です。

仙崎大輔、斉藤英二郎といったがむしゃらに「理想」を追う主人公を描くのが得意な佐藤
秀峰。個人的にはこの調子で綴られる政界漫画を読んでみたい。