柴田ヨクサル




谷仮面 (完全版全6巻) ☆☆☆☆★


wiki
谷仮面という漫画を知っているだろうか?この作者である柴田ヨクサルという漫画家は、
後述する「エアマスター」でヒットしある程度知名度を高めた。しかし、漫画読みという
人種以外の一般への知名度はほぼ無名といってもいいだろう。だが侮ってはいけない。柴
田ヨクサルの作風は強烈な個性を放ち、人を惹きつけるチカラを持っている。分類するな
ら稀有な”荒木飛呂彦タイプ”の漫画家だ。内在するパワーを持て余す、豪腕ファイター。
そんな柴田ヨクサルのデビュー作がこの谷仮面だ。簡単に説明すれば実に単純なバトル×
恋愛×ギャグの学園物ということになるのだが、そういったジャンルの作品が多くある中
で重要なのは常に恋愛、バトル、ギャグといったファクターのバランスだ。通常はこれら
の因子が別個として混在しているものだが、この作品では全く違っている。つまり、学園
ものの定番として、喧嘩をしながらも時には恋に悩み、青春を謳歌しつつギャグが散りば
められている、といった形がスタンダードなものだ。しかし谷仮面では、バトルそのもの
が恋愛であり、ギャグであり、それでいてシリアスさを失わないという世界観がヨクサル
氏の独特な作風によって形作られている。まず主人公が全編通して仮面を被っている。こ
の時点でギャグである。仮面を被った理由にもシリアスな背景があるのだが、しかしどう
考えても仮面ってお前、どんな高校生だよ、って話だが、一度ヨクサル氏の手で描かれる
ことによってどこか簡単にツッコめない説得力が生まれる。深く考えるとなにかのオマー
ジュのような気すらしてしまう。そして物語が後半に進むにつれてその世界観は加速して
いくのだ。そして、紙面に解放される膨大なポテンシャル。愛の叫び。月並な少年漫画の
ようであって実はそうでない。薀蓄では語れない本能的な物語の濃さを持った不思議な作
品だ。

なお、通常版は絶版となっていて入手は非常に困難。
書き下ろしも収録されている完全版が出ているのでそちらを購入しよう。